自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
クロードの腕の中で辺りを見回せば、いつのまにか、三十人ほどの人相の悪い男たちに囲まれていた。

彼らは、セシリアの誘拐を企てた一味であり、騎士がたったひとりなら、まだ王女を奪えるチャンスはあると踏んで、襲いかかろうとしているのだ。


クロードは庶民風のマントの下から剣を抜き、右手で構える。

左手は、怖がるセシリアをしっかりと抱きしめていた。

頼れるクロードが守ると約束してくれても、セシリアの鼓動は少しも落ち着かない。


(クロードさんは、騎士の中でも一番強いと、お父様が言ってらしたけど、こんなに大勢を相手にするのは無理よ。私を守りながらだと、動きにくいもの。ああ、どうしましょう……)


「王女を生け捕りにした者には、金貨百枚をくれてやるぞ。者ども、かかれ!」

悪党一味の親玉が命じると、男たちが剣やナイフを手に、次々と襲いかかってきた。

「キャア!」と叫んだセシリアが、クロードにしがみついて目を固く閉じたら、剣が交わる金属音がすぐ耳元で聞こえた。

骨が砕けるような鈍い音に、悪党たちの呻き声。

体は右へ左へと、クロードの手によって激しく翻弄されて、瞼を閉じていても目が回りそうである。
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