自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
それにしても、セシリアを守りつつ、大勢をひとりで相手にしているというのに、クロードに焦りが見られないのはどういうわけか……。

厳しい状況であればあるほど、冷静かつ的確な判断力が求められるものではあるが、それを実行できる精神力が素晴らしい。

そして、聞きしに勝る、その強さ。

セシリアが恐怖に震えていたのは、ほんの五分ほどで、彼はたちまち三十人ほどの敵勢を倒してしまったのだ。


目を開けて驚くセシリアであったが、すぐに胸には安堵と喜びが広がり、クロードの腕の中でその顔を仰ぐ。


「ありがとうござ……えっ!?」


セシリアの笑顔が凍りついた。

わずかに息を乱しているだけで、無事だと思っていたクロードが、あちこちを負傷していたからだ。

セシリアを守っていた左腕は無傷であるが、右半身の十カ所ほどの太刀傷からは、衣服に血が染み出している。

それよりも深手を負ったのは額で、左側に斜めに五センチほど斬られた傷口がある。

おそらくは、左側からの攻撃に対し、セシリアを離して左手で弾くという選択ができず、額で受け止めたものと思われた。

溢れ出た血が、顎先からポタポタと垂れ、地面を赤く染めている。

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