自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
クロードの知らないところで、王城医師の助手と掃除のメイドに嫌がらせを仕掛けたが、失敗して人助けになってしまった。

親友のイザベルに対しても、喜ばせるつもりは少しもなく、辱めを受けてもらおうとしたのに……計画とは真逆に感謝される展開になり、困ったのはセシリアの方であった。


それらをとつとつと話す間、クロードは同じ位置から動かず、口も挟まずに静かに聞いていた。

気力のない小さな声でも、礼拝堂は音が響くので、聞き漏らしてはいないと思われる。

彼がなにを思ったのかは、背を向けているセシリアにはわからない。

けれども、きっと嫌われてしまっただろうと予想して、重苦しいため息をついた。


(悪役令嬢にはなれず、クロードさんには嫌われて、全てにおいて失敗ね。お父様は、私を高く評価してくださるけど、自分ではそう思えないわ。出来損ないの情けない娘よ……)


自己嫌悪や悲しみの混ざった涙が、ポタリと彼女の足元に落ちた。

唇を噛みしめて堪えようとしたが、溢れる涙は止まらない。

ついには両手で顔を覆い、呻くように泣きだした彼女に、クロードが歩み寄る。

真後ろで足を止めた彼は、困惑したような息を漏らしていたが、セシリアを非難するような言葉はかけなかった。

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