自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
訪問者の対応に出たのはカメリーで、廊下に出て、誰かと小声で会話をすると、ドアを閉めてセシリアの前まで戻ってきた。

真面目が性分のカメリーは、背筋を伸ばして両手をお腹の前で揃えると、事務的な口調で用件を伝える。


「国王陛下が執務室にて、セシリア様をお呼びになられているそうです」

「お父様が? あ、もしかして……」


使者を見送らなかったことを叱られるのではないかと、セシリアは予想した。

彼女の父は優しい人徳者であるが、娘に対し、甘い顔ばかり見せてはくれない。

間違った言動を取った時には、執務室に呼ばれて説教されたことが、これまでに何度もあった。

けれどもそれは子供の頃のことで、ここ数年、そのようなことはない。


(やっぱりお見送りするべきだったわ。遠路遥々お越しいただいたのに、失礼よね……)


久しぶりの父の説教も、仕方ないと納得して頷いたセシリアは、苦笑いして侍女たちに言う。


「お父様に叱られてくるわ。その肖像画は……飾らないと、それもまた失礼に当たるわよね。ドア横の壁にかけてもらえるかしら? 風景画だと思えば、きっと、そんなにつらくないわ……」


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