自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
広い王城内を、数分かけて、また西棟の二階まで戻ったセシリアは、父の執務室のドアをノックした。
「お入り」という声がして入室すれば、国王は、部屋の中央にどっしりと構える執務机に向かって、なにかの書き物をしていた。
その手を止めて、「ここへおいで」と呼び寄せる父の表情に厳しさはなく、これから説教を始めようという雰囲気ではない。
それなら一体、どんな用事で呼び出されたのか……。
セシリアは戸惑いながらも歩み寄り、父親の横に立った。
娘と同じ色の瞳が優しげに弧を描き、国王が穏やかな声で話し出す。
「先ほどは緊張していたのか? 随分と口数が少なかったな。次はもう少し、会話に入らないといけないぞ」
「はい、お父様。申し訳ございません……」
「叱っているわけではないから、謝らなくてよい。それよりもお前に、前向きな努力を促そうと思い、ここへ呼んだんだ」
「前向きな努力、ですか……?」
セシリアが首を傾げれば、国王は軽く頷き、口元に笑みを浮かべて説明する。
「お前に課題を与えよう。次に使者が来るのは、三カ月後だ。それまでに三つの人助けをしなさい。それはーー」
国王が突然、そのようなことを言い出した理由は、王太子妃の心構えにあるという。
「お入り」という声がして入室すれば、国王は、部屋の中央にどっしりと構える執務机に向かって、なにかの書き物をしていた。
その手を止めて、「ここへおいで」と呼び寄せる父の表情に厳しさはなく、これから説教を始めようという雰囲気ではない。
それなら一体、どんな用事で呼び出されたのか……。
セシリアは戸惑いながらも歩み寄り、父親の横に立った。
娘と同じ色の瞳が優しげに弧を描き、国王が穏やかな声で話し出す。
「先ほどは緊張していたのか? 随分と口数が少なかったな。次はもう少し、会話に入らないといけないぞ」
「はい、お父様。申し訳ございません……」
「叱っているわけではないから、謝らなくてよい。それよりもお前に、前向きな努力を促そうと思い、ここへ呼んだんだ」
「前向きな努力、ですか……?」
セシリアが首を傾げれば、国王は軽く頷き、口元に笑みを浮かべて説明する。
「お前に課題を与えよう。次に使者が来るのは、三カ月後だ。それまでに三つの人助けをしなさい。それはーー」
国王が突然、そのようなことを言い出した理由は、王太子妃の心構えにあるという。