自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
「セシリア様、靴屋が来ましたよ! いつもの応接室で待たせてます。いよいよこのミッションの最終段階ですね。気合いを入れて頑張りましょー!」

「わかったわ。いざ……!」


出陣前の兵士のような心持ちで、セシリアは椅子から立ち上がった。

ツルリーと一緒に、南棟一階の応接室前まで移動する。

胸に手を当て深呼吸してから、ツンとした澄まし顔を作り、ツルリーが開けたドアから応接室に足を踏み入れた。


セシリアがいつも座る椅子の右横にはカメリーが姿勢正しく立っており、まるで見張り兵ような面持ちである。

カメリーに監視されているのは、長椅子に腰掛けているコルドニエの主人。

それともうひとり、靴屋の右隣に、若い男性が座っていた。


(どなたかしら……?)


セシリアの入室に気づいて立ち上がった男性ふたりは、ドアの方に振り向いて深々と頭を下げる。

ひとり掛け椅子に歩み寄ってそこに腰掛けたセシリアが、横柄な態度で足を組むと、靴屋の主人は顔を上げて隣に立つ青年を紹介した。


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