初めまして、大好きな人
違う。
私、なんでか分からないけれど、尚央のことが好きだと思った。
今日は尚央に会えなくてがっかりして、
尚央なんて嫌いだと思ったけれど、
こうして会いに来てくれた必死な尚央を見て、
とても愛しいと思った。
これは何故?
私、記憶を保つことは出来ないのに。
今会ったばかりなのに。
こう思うのはどうしてだろう。
胸の奥がうずうずする。
目の前にいるこの人を、離したくないと思った。
「波留。明日は大学が休みなんだ。
だから遊園地に行こうか。
好きな乗り物いっぱい乗って、楽しく過ごそう。
な?明日はちゃんと、あの場所に行くから」
「遊園地?」
「嫌か?ちょっと遠いけど。いいですか?」
尚央は施設長に視線をやった。
施設長はこくりと頷き、笑った。
尚央は私に視線を戻して、それから微笑んだ。
「明日は九時にヴァポーレに行くよ。
約束する。だから波留。お前も絶対来いよ?」
「う、うん。約束、する」
「もう泣くな。悪かったな、今日は。
俺のために会いに来てくれてありがとう」
「そんな、私も、ありがとう。
来てくれて、嬉しかった」
「おう。お前のためなら、いつだってどこへだって飛んでいくよ。
だから泣き止め」
そんな素敵な言葉をかけて、尚央は私の頭を撫でた。
私の涙も、一瞬で引っ込んだ。
「よし。じゃあ波留。また明日な」
「うん。また、明日……」
「大丈夫。心配すんな。また会えるよ」
「うん」
尚央はにっこり笑うと、施設長に向けて頭を下げた。
施設長も同じように頭を下げる。
尚央にタオルを渡そうとした時、
尚央はそれを手で制して笑った。
「帰ります。失礼しました」