初めまして、大好きな人
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甲高いアラームの音で目が覚めた。
ぱっちりと目が覚めて、ゆっくりと起き上がる。
暑かったはずなのに、寒い。
急な温度変化にびっくりして、頭を振った。
次に異変に気付いたのは、この空間のことだった。
私はここを知らない。
どうして知らない部屋で寝ていたの?
お父さんとお母さんは?
立ち上がって、そっと扉を開ける。
長い廊下が続いていて、
しんと静まり返っているようだった。
廊下を歩いて、きょろきょろと辺りを見渡す。
見覚えのない場所。
一体何がどうなっているの?
何も分からない。
階段を下りると、音のする部屋があった。
覗いてみると、一人の男の人が
背中を向けて立っている。
キッチン?
冷蔵庫や調理台があって、
換気扇が回っている。
男の人は忙しなく行ったり来たりしていた。
「ん?波留ちゃん」
私に気付いた男の人は振り返った。
そこそこ年を取っているおじさんだった。
おじさんは眼鏡をかけ直して私を見ると、
にっこりと笑った。
「日記はもう読んだのかい?」
日記?そんなものあったっけ?
私の性格上日記なんてものは大体続かないはずなのに、
それでも私は日記を書いているっていうの?
何を言っているのか分からなくて黙っていると、
おじさんは火を止めて私に近づいてきた。
「部屋に戻って、日記を読んでおいで。
青いノートだよ。
それからここに来るといい。
全部教えてあげよう。君の今の現状を」
「お父さんと、お母さんは?」
おじさんは静かに首を横に振った。
何?いないの?どこにいったの?
もしかして私、捨てられた?
「日記を読むんだ。全てはそこに、書いてあるから」