初めまして、大好きな人
訳が分からないままキッチンを出ると、
私は二階に上がって元いた部屋へ戻った。
見てみると分かりやすく
テーブルに青いノートが置いてあった。
なるほど、これか。
ベッドに腰かけてノートを見た。
表紙には「MEMORe:」と書かれている。
これが私の日記なの?
なんだか違和感を感じる。
ノートを開いてみて、日記のように
日付が書かれているのを見て、
ああ、間違いないと思う。
もちろん日記を書いた覚えはない。
これは本当に私の日記なの?
目を通していって、胸がざわつき始めた。
事故に遭ったこと、お父さんとお母さんを亡くしたこと、
前向性健忘という病気のこと。
何を言われているのか分からなくて、
しばらくその文字を眺めていた。
なにこれ、何の冗談なの。
お父さんとお母さんが死んだ?
前向性健忘って何?
ノートを最後まで読み終えて、
そっとノートを閉じた。
なかなかの量の日記だった。
目を閉じて考える。
ああ、私意外と冷静だ。
まず、あの施設長というおじさんに話を聞いてみよう。
そう思って立ち上がり、部屋を出ると階段を下りた。
さっきの部屋、つまりキッチンに行くと、
施設長は待っていましたと言わんばかりに微笑んで
私を椅子に座らせた。
料理はもう完成していて、その量はとても多かった。
この施設には一体何人の子供がいるんだろう。
「日記を全部、読んだんだね」
こくりと頷くと、施設長は笑った。
「すごいな。こんなに冷静なのは今までになかった。
すごい進歩とも言える。
今日の君はとても大人びている。
私の話を聞いてくれるかい?」
また頷いた。
日記にも書いてあった通り、
今までの私はとてつもない拒否反応を
起こしていたみたいだったけれど、
今日の私は意外と冷静で、
お父さんとお母さんが死んだっていうのに
心は穏やかだった。