初めまして、大好きな人



「素敵な名前。その名に恥じないくらい素敵な子ね。
 穏やかで優しそうで、いいね、波留ちゃん」


「ありがとうございます」


真理愛さんに笑顔を向けてから、雅文を見る。
そしてべっと舌を突き出した。


ムッとした雅文は私をじろりと睨みつけた。
凄まれてももう怖くない。
なんでだろう。十九歳って知ったからかな。


「真理愛さんの名前はどんな字ですか?」


「私のはね、真理の愛って書いて真理愛よ。
 で、雅文は雅な文って書いて雅文」


「おい、勝手に人の名前まで教えんな」


「聞きたくないけど、一応覚えておきます」


私も嫌味っぽく言い返すと、雅文は舌打ちをした。


それにしても素敵。真理の愛か。
綺麗な名前だなぁ。
容姿端麗だし、愛想もいいし。
こんな大人になりたいと思う。


「改めてよろしくね。そうそう、
 波留ちゃんはショコラミントよね。すぐに持ってくるから」


真理愛さんはにっこりと笑ってそう言うと雅文を促した。


雅文は面倒くさそうに返事をすると奥へと消えていく。


真理愛さんは私のそばでにこにこ笑っていた。


雅文が持ってくるのか。
なんだか気に食わないけど、
あいつにここで残られるよりマシだった。


「ねえ、波留ちゃんは
 あの男の人とどういう関係なの?」


「えっ?」


「いつもここに来る人。
 あの人のこと、好きなのかなって」




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