初めまして、大好きな人



突然そんなことを言われて、少し戸惑う。


好きかって聞かれても、私はまだ顔も見たことなくて……。
それにどういう関係かって言ってもどうにも……。


「どういう関係かって言われると、ただの知り合い?って感じで。
 私が尚央のことを好きかって言われるとよく分からないというか」


どっちつかずの言い方で答えると、
真理愛さんはにやにやと笑って私の向かい側に座った。


仕事はいいのかな?
まあ、雅文にやらせればいいか。
なんか女子トークみたい。
高校生の頃に戻ったみたい。


「へえ、尚央さんって言うんだ。
 彼、かっこいいわよね」


やっぱりかっこいいのか。
真理愛さんも言うくらいなら、イケメンなんだろう。


どんな顔をしているんだろう。気になる。


「私ね、前に彼に思い切って聞いてみたの。
 彼女いるんですかって。
 私にもチャンスあるかなって思ってね」


そうなんだ。真理愛さんは尚央のことが好きなんだね。
なんだか胸がチクリと痛んだ。
お似合いなのかもしれない。


これだけ美人なんだもん。
イケメンの尚央にぴったりな彼女になりそう。


「そうしたらね、彼女はいませんって」


「そう、なんですか」


「でもその後に、好きな子がいるんですって言われてね。
 ああ、私は負けたって思った」



好きな子。日記に書いてあったことを思い出す。
好きだと言われたんだっけ。
それが私のことかは分からない。
だって尚央と会ったのは今月に入ってからだし、
もしかしたら違う子かも。


「先月の半ばくらいかな。波留ちゃんがここに通うようになって、
 彼、ずっとあなたを見ていたから、
 ああ、あの子なのかって思ったわ。
 見てみてびっくり。
 その子が高校生くらいの女の子だとは思ってもみなかった!」


「あの、私……」


「彼、絶対にあなたのこと好きよ。
 あなたはどうなの?彼のこと、好き?」


「おい、仕事しろよ」


雅文がショコラミントを持ってやってきた。
真理愛さんは不機嫌そうに頬を膨らまして立ち上がる。
私がショコラミントに目を向けた時、カランコロンと音が鳴った。


< 109 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop