初めまして、大好きな人



「いらっしゃいませー」


真理愛さんが反射的に挨拶をする。


切り替えが出来る人ってかっこいい。


そう思ってドアの方を向くと、男の人が立っていた。


「いつものですね」


真理愛さんが男の人に向かってそう言うと
男の人は頷いて辺りを見渡した。


きょろきょろして私と目が合うと、にっこりと笑った。


あっ、この人が尚央かもしれない。
そう思う頃にはその人は私の向かい側に来ていた。


「波留。お待たせ。分かる?」


「う、うん。尚央」


「良かった。寝坊して大変だったよ」


冬なのにパタパタと手で仰ぐ尚央は本当に暑そう。
きっと寝坊して焦って支度してきたんだろうなって見ただけで分かる。
尚央は私の向かい側に座ってパソコンを開いた。


それを見ていると、ふと視線に気づく。
見るとそばに雅文が立っていた。


口をあんぐりと開けて私と尚央を見ている。


何か用?と目で訴えると、
首を傾げて奥に消えていった。


「おまたせしましたー」


真理愛さんが尚央の「いつもの」を持ってきた。
確かこれはハニーミルクラテだったよね。


真理愛さんは尚央の前にハニーミルクラテを静かに置くと、
私に目配せをした。


「さて、今日は遊園地に行くんだったな」


「う、うん」


「これ飲んだら早速行くぞ。ちょっと遠いからな」


尚央はハニーミルクラテを一気に飲む。
私も勢いよく喉に流し込んだ。


なんだかドキドキする。
これは本当にイケメンだ。
真理愛さんが言うのも頷ける。


二人同時に飲み終えて、
尚央が二人分の伝票を持って立ち上がる。


私も慌てて立ち上がってレジへと向かった。


尚央が支払っている間に、
奥から雅文が顔を覗かせている。


私はべっと舌を突き出してみせた。
すると雅文も同じように舌を突き出してくる。
なんともイラつくやつだ。


でも、なんだか喧嘩出来る相手が出来たみたいで嬉しかった。


これは雅文と真理愛さんのことも日記に書いておかなきゃ。




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