初めまして、大好きな人
尚央が向かったのはお化け屋敷。
しかもパンフレットを見た時から怖かった。
ここはこの辺じゃ有名な超絶怖いお化け屋敷じゃん。
絶対に怖いよ。
生きて帰って来られないかもしれない。
それでも尚央は嫌がる私を引っ張って、
お化け屋敷へと引きずり込んだ。
「尚央、絶対に手、離さないでね」
「さあ、どうかな」
「絶対だよ。離したら絶交!」
「はは。絶交は嫌だなぁ」
「きゃぁああ!」
急に暗くなった途端、私は一発目の悲鳴を上げた。
それを見ていた尚央が面白がって、
歩いている最中に「わっ!」と大きな声を出した。
「きゃあああああああ!」
驚いて尚央の腕にしがみつく。
尚央は大きく笑って何事もなく足を前に進める。
この人……ジェットコースターの仕返しが
まさかこんな形で返ってくるとは思わなかった。
怖すぎる。
まだお化け、一体も出てきていないのに。
どんどん前に進むと、早速お化けが沢山出てきた。
特に赤ちゃんの泣き声が響き渡るのは怖すぎる。
何度も目を閉じたり開けたりしながら尚央にしがみついて、
震える足で前に進む。
尚央はしれっとした顔で楽しんでいるようだった。
この人、怖くないのかな。
ただのお化け屋敷じゃないんだよ?
超絶怖い最高級のお化け屋敷だよ?
普通に笑って進む変人がいる?
私はもう絶対に、ジェットコースターに誘わないと心に誓った。
ジェットコースターみたいな乗り物が嫌いな人には無理に勧めない。
じゃないとこうして仕返しされるから。
いい教訓になった。絶対にメモしておこう。
やっとの思いでお化け屋敷を出る頃にはぐったりしていて、
私もジェットコースターから帰ってきた尚央みたいに肩で息をした。
尚央はソフトクリームを買ってきてくれた。
そのソフトクリームを頬張って、ベンチに座ると、
尚央も隣に座った。
「波留、楽しいか?」
「うん。楽しいよ。お化け屋敷は勘弁だけどね」
「また来ような。そしたらまたお化け屋敷だな」
「もうジェットコースターには乗らないよ」
「なら俺もお化け屋敷には入らない」
そんなことを二人で言い合いながら
ソフトクリームを食べ終えて、続きを楽しむ。
いっぱい遊んで、いっぱい笑った気がした。
病気とか、お父さんたちを亡くした不幸な自分とか、
嫌なことをすべて忘れられた。
本当に、心の底から楽しかった。