初めまして、大好きな人



お土産も買って乗り物にも乗りつくして、
日も傾いてきた頃、尚央は大きな観覧車を見上げて言った。


「最後はあれに乗ろう」


「観覧車?」


「うん。嫌か?」


「ううん。観覧車大好き」


私たちは観覧車の前まで来ると順番を待った。
そして順番になり、
十八の番号がついたピンクの観覧車に乗った。


「わあ、久しぶり」


「俺も。いつ以来かな。小学生ぶりかも」


「私も小学生ぶり。懐かしいなぁ。
 ねえ、知ってる?観覧車ってゆっくり回るでしょう?
 だから大事な話をするにはうってつけの乗り物なんだって。
 それにね、この観覧車の頂上でキスしたカップルは
 永遠に結ばれるっていうジンクスが……」
 

そこまで早口で言って、しまったと思う。
余計なことを言ってしまった。


これじゃあ恥ずかしくて気まずくなるじゃない。


失敗したと口を閉ざしていると、
尚央が私をじっと見つめて口を開いた。


「波留は、好きなやついんの?」


「えっ?」


「どうなんだよ」


「い、いない……よ。だって出会いもない、
 そもそも出会っても私は全部忘れ……」


思い出した。そうだよ。
私は忘れちゃうんだよ。
全部無駄なんじゃん。
無駄なんだよ。人を好きになるなんて、私には無理だ。


「出来るよ。波留にだって幸せになる権利はある」


「でも、病気だよ?何も覚えていないんだよ?
 好きな人の顔も、好きになった感情さえも忘れちゃうんだよ!」






「それなら、俺と恋をしてみないか?」






「えっ?」


尚央は私の目をまっすぐに見て言った。


突然のことで頭が追いつかない。
誰と誰が、恋をするって?


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