初めまして、大好きな人
そう言ってにっこりと微笑む尚央。
夕日が尚央を程よく照らしていた。
キラキラしていて、眩しかった。
私は、この手を取ってもいいの?
後悔しない?これが正解なの?
分からないけど、この手を取ったら幸せが待っていると、
何故かそう思った。
幸せになりたい。
こんな私でも幸せになれるんだと、
病気のことを嘆いていた昨日までの私に教えてやりたい。
「幸せになりたい……」
「俺が幸せにするよ、波留」
「尚央は私のこと、好き?」
「好きだよ。波留」
ドクン。胸が高鳴った。
胸の奥がうずうずする。
私は尚央の手をそっと握り返した。
「面倒臭い私だけど、よろしく、お願いします」
そう小さく言うと、尚央にそっと抱きしめられた。
尚央の心臓の音が聞こえる。
私と同じで、その鼓動は速かった。
「断られたらどうしようかと思った。
ありがとう、波留。よっしゃあ!」
「尚央、苦しい」
「波留。好きだ。誰よりもお前が、好きだ」
尚央はそう言うと、私を離して
ゆっくりと顔を近づけてきた。
キスされる。そう思って目を閉じる。
唇は柔らかく私の唇に触れた。
とても優しくて、温かいキスだった。
そっと唇を離す。
緊張して呼吸が乱れてしまい、
大きく息を吸って整える。
尚央が観覧車の外を見て、静かに笑った。
「ちょうど頂上だ。ジンクス、当たるかな」
憧れだったこと。
友達が話している観覧車のジンクスを聞いて、
自分もそんな恋がしたいと思った。
それが今、実現できたなんて。
「ねえ、私、尚央の彼女になったんだよね」
「おう。そういうこと」
「私、彼氏が出来たの初めて」
「俺も、彼女が出来たのは初めてだよ」
「なんか嘘くさい」
「嘘なもんか」
二人で見つめ合って、笑い合う。
さっきまでのロマンチックな雰囲気はどこへやら。
でも。これがいいんだ。
これが、私の絶頂の幸せなのかもしれない。
「波留。好きだ」
もう一度、尚央が私にキスをする。
大人のキスは私にはまだ早すぎたけれど、
うっとりして、蕩けそうで、幸せだった。
息が上手くできなくて少し苦しいけれど、
その苦しさもきっと、幸福に変わってくる。
私は誰よりも幸せ者だと、そう思えた。