初めまして、大好きな人
ゆっくりゆっくりと、観覧車は回って、
その間私たちは何度もキスを繰り返した。
忘れてしまわないように、何度も、何度も。
観覧車が地上に着いた頃、
ちょうど閉園時間を知らせるアナウンスが鳴っていた。
私たちは観覧車を降りて出口へと向かう。
どちらともなく繋いだ手。
尚央の手は冷たいはずなのに、温かく感じた。
車に乗り込もうとした時だった。
「あれ?尚央じゃない?」
女の人の声がした。
振り返って見ると、ショートカットの女の人がいて、
サングラスをかけたガタイのいい男の人と一緒だった。
誰だろう。尚央の知り合いかな。
「どうしたの~?そんなかわいい妹さんなんていたっけ?」
妹じゃないもん。
ムッとして彼女を睨むけれど、
女の人は私に近づいてきて、頭を撫でた。
まるでわかっていない。
私は怒っているんだけど。
「誰?」
「やだー。忘れたとは言わせないわよ。
誰があんたを男にしてやったと思ってるの」
「えっ」
「初めて付き合った女の顔くらい覚えていなさいよ。
亜里沙よ、亜里沙」
「……妹じゃない。こいつは―」
「嫌だ。ねえ、まだ怒ってんの?
ごめんってば。
確かに私はあなたが次期社長だって言うから近づいたけれど、
あなたも私のことそんなに愛してくれなかったじゃない。
おあいこでしょ?」