初めまして、大好きな人
バシっと、思わず尚央の頬を叩いた。
尚央なら避けられたと思う。
だけど尚央は私のそれを受け止めた。
私が叩いた方の頬はあの時あの男に殴られた方の頬で、
瞬間尚央が顔をしかめたのが分かった。
よく見ると、少し腫れている。
申し訳ない気持ちが芽生えたけれど、
そんなのはすぐに消えてしまった。
「尚央なんて嫌い。大嫌いよ!」
私は散らばったお土産を拾い集めて、走り去った。
尚央の声が聞こえたけれど聞こえないふりをして振り切った。
追ってくる様子はなくて、
私も途中で足を止めて後ろを振り返った。
そこに尚央の姿はない。
私はどうしてほしかったんだ。
追いかけてきてほしかったの?
ほっといてほしかったの?
分からない。
どちらであってもムカムカしてしょうがなかった。
急にじわりと涙が込み上げてくる。
泣きそうになっていると、後ろから声がした。
「おい、何やってんだ」
振り返ると、そこには雅文が立っていた。
エプロン姿だから当然まだ仕事中だ。
そういえば零時まで営業なんだっけ。
「何?お前泣いてんの?」
そう問われて、慌てて涙を隠す。
すると雅文は私の腕を掴んだ。
「とりあえず入れよ」
「えっ?」