初めまして、大好きな人
何も言う暇もなく、引っ張られていく。
カランコロンと音がして中に入ると、
「いらっしゃいませー」と真理愛さんが挨拶をして、
私を見ると何かを察したように頷くとにっこりと笑った。
「波留ちゃん、いつもの席。空いてるよ」
「でも、私……」
「いいから!座ってて」
真理愛さんに促されて窓際の奥の席に座った。
雅文が水を持ってきて、奥へと消える。
お客さんの接客を終えると、
真理愛さんが私のところへ来た。
「波留ちゃん、ショコラミントでいいよね」
「えっ、でも私……」
「お代は結構。サービスよ」
真理愛さんはそう言ってウインクした。
すると雅文がぶっきらぼうにショコラミントを持ってくる。
「またあんたは!」と言って真理愛さんが雅文を小突く。
そして彼女は笑った。
「波留ちゃん。私今忙しいから、
何があったかはこいつに話してね」
「えっ、あの」
「なんで俺が!」
「あんたまだこの忙しい時間帯切り盛り出来ないでしょ」
「そりゃそうだけど、でもっ」
「いいから波留ちゃんのそばにいな!」
怖い顔をしていた真理愛さんは私を見てにっこりと笑うと、
ちょうど来たお客さんの相手をしに戻って行った。
「くそっ」
悪態をつきながら向かい側の席に腰を下ろす雅文。
面倒くさそうに、そっぽを向いている。
「で?何かあったのかよ」
「あんたに話すの?」
「話したくないなら別に聞かねぇよ。
興味もねぇしな」
「何その言い方」
「あのなあ、聞いてほしいのか聞かないでほしいのか、
どっちなんだよ」