初めまして、大好きな人
一瞬だけこっちを見た雅文は
それだけ言うとまたそっぽを向いて頬杖をついた。
私は最初こそ黙っていたけれど、
今日あった出来事をポツリポツリと話していた。
そっぽを向いてくれているからか、話しやすかった。
雅文は何も言うことなく、私の話を聞いていた。
私が全部話し終えると、そこで雅文は初めて口を開いた。
「ちょっと待て。あいつに告白されたのか」
「突っ込むとこそこ?」
「だってあのおっさん何歳だよ。お前十七だろ」
「二十三よ。文句ある?」
「……六つも違うじゃねぇか」
雅文は呆れたようにそう言った。
そこそんなに重要?
六つ離れているから何?別に問題はないでしょう?
「で?そいつの元カノが現れたってわけね」
思い出すと腹が立つ。
亜里沙にお父さんやお母さんのことに触れられたのも、
肩を触られたのも、そもそも尚央に彼女がいたことも
何もかも腹が立つ。
悔しくて惨めで、涙が溢れてきた。
ポロポロと溢れる涙を止める術を私は知らない。
悔しい、情けない、悔しい。
「なんで?別に元カノがいてもいいだろ。
初めての女じゃなくたって、
今はお前のことが好きなんだから」
「違うの。だって尚央、私が初めてだって言って、
それは私にとって一番大事なことで、それに私、私……」
「ああ、分かったから泣くなよ。そこそんなに重要か?」
「雅文の馬鹿。私にとっては重要なのよ!」
「はいはい。分かったよ」
雅文は呆れたようにそう言うと、私の頬に指を当てた。
涙を拭う雅文は、なんだか午前よりも大人に見えた。
「俺なら好きな女、泣かせねぇけどな」