初めまして、大好きな人
ノートを手にして施設を出る。
施設「カルタ」は私の元の家の近くにあって、
華やかな雰囲気を放っていた。
カルタを出て私はノートに目を落とした。
道はこっちか。
公園があり、蛙のオブジェ……あった!
我ながらいい目印を選んだと思う。
おかげで迷うこともなく、私は喫茶店「ヴァポーレ」に着いた。
カランコロンと音を立てて扉が開く。
すると中からポニーテールの店員さんが顔を出して、
私に向かって「いらっしゃいませー」と笑顔で言った。
「一人で」と言うと、「お好きな席にどうぞー」と言われる。
私は日当たりのいい窓際の席を選んだ。
そこに座ると、綺麗な可愛らしいグラスに入ったお水を持って、
さっきの店員さんがやってきた。
「いつものですね?」
「えっ、あ、はい……」
いつものってなんだ?
咄嗟に頷いたけれど、果たしてそれがなんなのかは分からない。
だけど一つだけはっきりしたことがある。
私は無事にこの店に着いたし、
店員さんも私を知っているみたいだし、
「いつもの」が出るくらいには常連ってこと。
ということはこのノートに書かれたことは、
全て本当のことなんだ。
そうすると、やっぱりお父さんたちが亡くなったことも本当で、
私が施設で暮らすようになったことも本当で……。
そう思うとじわりと目に涙が浮かぶ。
私は一体、ここで何をやっているんだろう。