初めまして、大好きな人



「波留ちゃん、落ち着いたかい?」


「うん。ごめんなさい。取り乱しちゃって」


「いいんだよ。ゆっくりでいい。
 この病気と向き合っていこう。
 ところで波留ちゃん、今日も出かけるだろう?
 まずは朝ごはんを食べよう。みんなが待っているよ」


私は頷いて、立ち上がった。


施設長に促されて食堂へと向かう。


すると小さな子どもたちがすでにテーブルの前に座っていて、
みんなが明るく笑って挨拶をしてくれた。


みんなは私の病気のことを知ってか知らずか、
普通に接してくれた。


「お姉ちゃん、おはよう」


「お、おはよう」


「僕のこと、わかる?」


「えっと、あなたは確か……雄介くん?」


「そう!今日も僕のこと覚えてた!」


左目に眼帯をしている男の子のことは日記に書いてあった。


雄介は嬉しそうに笑うと私の隣で姿勢を正した。


みんなで朝ごはんを食べて、片づけをすると、
子どもたちはみんな遊びに出かけてしまった。


手持ち無沙汰になった私はなんとなく施設長を探した。
施設長は庭に出ていて、花に水やりをしていた。


「やあ、出かけるのかい?」


「えっ?ああ、うん」


「行ってらっしゃい、波留ちゃん」


施設長は笑顔でそう言った。
私は一旦部屋に戻って、ノートを手にした。


ポケットに鍵をしまって、もう一度外に出る。


施設は見上げるととても大きかった。



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