初めまして、大好きな人



施設を出てノートを見る。


確か喫茶店を目指せばいいんだよね。


本当にたどり着けるのかと半信半疑で歩き出すと、
目印になるものが次々と出てきて楽しくなった。


喫茶店「ヴァポーレ」には程なくして着いた。


中に入ると、ポニーテールの店員さんが
にこやかに挨拶をしてきた。


私は窓際の一番奥の席に着いた。


店員さんがお水を運んできて「いつものですね」と言った。


私はノートを見て小さく「はい」と頷いた。


いつもいる店員さんなんだな。


これもノートに書いておいたほうがいいのかな。
なんて思いながらノートにペンを走らせた。


しばらくして店員さんが「いつもの」を持ってきた。
一口飲んでみるとショコラミントだった。
ノートに書いてあることは本当のことなんだと改めて実感する。



日記によるとここら辺で尚央っていう男の人が
出てくるはずなんだけど、


待てども待てども一向に来る気配がない。


ショコラミントもいつの間にか飲み干していた。


頬杖をついて窓の外を眺める。
やっぱり来ないかな。
そうそう来るわけないよね。
約束しているわけでもないしね。


もう帰ろうかな。
そう思って伝票を持って席を立った時、
カランコロンと音がして扉が開いた。



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