恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

バッグをぎゅっと抱えて梓が心細くしていると、一樹がその手を握った。


「大丈夫だよ。心配する必要はない」


一樹にそう言われると、梓の気持ちが不思議と落ち着いていく。
今一番ほしい言葉をかけてもらえたからなのだろう。

運転のため一樹の手が離れても、梓は心強い言葉を頭の中で繰り返していた。


到着した病院内に梓のヒール音が響き、その後から一樹の足音もついてくる。
音を立てずに静かにしたいが、はやる気持ちを抑えきれない。

(早くおばあちゃんのところに行かなくちゃ)

そんな思いだけが梓の足を動かしていた。
送ってもらえただけでもありがたいのに、一樹は帰らずに付き合うと言ってきかなかった。
気持ちばかりが焦るせいか、病院の広さを改めて思い知る。

循環器内科の病棟に着いたとき、梓の息は切れ切れだった。


「おばあちゃん!」


多香子の病室のドアを開けて、思わず名前を呼ぶ。

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