恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

一樹はそう言うなり、どういうわけか梓の手を取り走りだした。


「えっ、あのっ、社長!?」


半ば引きずられるようにされ、梓も惰性で足を前に出す。走らざるを得なかった。

振り返ってみれば、話しかけてきた男は唖然とした顔で立っており、さらにその向こうからは一樹の秘書である三島友里恵(みしま ゆりえ)が走ってきた。
必死の形相だ。キリッとした美人だからこその迫力がある。

どうして一樹は友里恵から逃げているのか。
友里恵はなぜ、一樹を追っているのか。

わけがわからないまま、一樹に手を引かれて走る。

理由はわからないが、自分がぺったんこのパンプスを履いていることに感謝した。もしも高いヒールだったら、こうして走れなかっただろう。
といっても、梓は万年ぺったんこの靴だけれど。

身長の高さにコンプレックスを感じているため、高いヒールは天敵のようなもの。ただでさえ百七十センチ近くあるところに高さを加えたら、それこそ大女だ。

履かずにいれば絵梨のようなかわいらしい女になれるかといえば、答えはノー。でも、わざわざ自分から遠ざかりたくはない。

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