恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

座敷を出て、小上がりでスタッフに靴を揃えてもらっていると、梓はふと横に人の気配を感じた。
邪魔になるかと思い、その人物をよけて見上げた梓は、そこで驚いて声をあげる。


「かず、……社長!?」


一樹の後ろに見知った取引先の顔が見え、咄嗟に呼び方を変える。


「佐久間さんじゃないか」


一樹の方も目を丸くして驚いていたが、一緒にいる取引先の手前、〝梓〟と呼ばないあたりは冷静だ。
お互いに目を見開き、しばらく見つめ合った。


「梓、こちらは?」


陽子に尋ねられ、クレアストの社長だと紹介する。


「まぁ、いつも娘がお世話になっております」


一樹の瞳が動揺に揺れたように見えた。こんなところで会ったのだから、それも無理はないだろう。

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