恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

ただ、それもほんの一瞬。すぐにいつもの堂々とした一樹に戻る。


「佐久間さんのお母様でいらっしゃいましたか。佐久間さんにはよくやっていただいております」


陽子に目礼で返した。
そこで一樹の視線が遠藤に注がれ、梓になんとなく緊張が走る。
一樹に一方通行の想いを抱えている梓は、べつの男性と一緒のところを見られたくはなかった。


「今後も娘をどうぞよろしくお願いします」


陽子がそう締めくくり、梓もそれらしく頭を下げたところで、今度は遠藤が一歩前へ出た。


「遠藤不動産の遠藤と申します」


名刺を差し出しながら自己紹介をする。
一樹は社名を繰り返しながら首をかしげて遠藤を見た。直接取引がないため、梓同様に思い当たらないのだろう。


「先日は大変盛大な創立記念パーティーにご招待いただき、ありがとうございました」


遠藤にそう言われて、一樹が「あの場にいらしたのですね」と紳士的な笑みを浮かべる。

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