恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「ご結婚はお考えになっていないと」
「いや、結婚はするよ。したいと思ってる。見合い結婚もいいなと一時は考えた。けどやっぱり、結婚相手は自分で見つけたいしね。それに一気に十人の女性との見合いなんて、相手に失礼極まりないだろ? そんな不誠実はするつもりはない」
一樹はきっぱりと言い切った。
結婚に及び腰なのではなく、見合いのやり方が気に入らないらしい。
「だが、あの三島のことだからな……」
よほど手強いのか、一樹は眉根を寄せて気難しい顔をする。
三島友里恵は、クレアストに中途入社して三年になる。それまで数々の大企業の役員秘書を担当した経歴の持ち主。
四十五歳とは思えない瑞々しさとたおやかさのある美女で、知識も兼ね備えた万能な秘書である。社内の噂によれば、社長にも物怖じせず意見するため、秘書にしておくのはもったいないと言う部長たちもいるとか。
一樹はしばらく押し黙って考えるようにした後、虚を突かれたように梓を見た。
真剣なようでいて、どこか楽しげ。そんな目だった。
(……どうしたのかな)