恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

「……ですが、進行表にはなにも書かれておりませんが」


ポケットに手を突っ込んだ梓は、それを絵梨に渡したままであるのに気づいた。
でも、梓の記憶に間違いはない。ミスがあってはならないと、それこそ紙に穴が空くほど何度も確認したのだから。


「そりゃそうだろう。創立記念パーティーとは別だ。三島がどこぞやの令嬢を十人も集めているらしい」


そういえば、と梓が思い返す。招待客の中に取引先とは明らかに違う着飾った女性をちらほら見かけていた。
受付は総務部が担当していたため詳細はわからず、取引先の社長が自身の娘を同行していると思う程度だったが。

しかしなぜ、友里恵がそこまでして一樹に相手を探すのだろう。しかも十人も集めるとは、相当本気だ。


「社長、恋人はいらっしゃらないんですか?」
「まあね。特定の女性との付き合いは長らくしてないな」


容姿にも肩書きにも恵まれた一樹のこと。恋人はてっきりいるものだと思っていたが、特定じゃないにしろ複数のそういった相手はいるのかもしれない。

< 15 / 301 >

この作品をシェア

pagetop