恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
先に帰る陽子とエントランスロビーで別れ、梓たちはエレベーターホールへ向かう。すると、信じられないことに一樹が梓から少し離れたところに立った。
(えっ、一樹さんも上に行くの? やだ、どうしよう……)
取引先とは別れたのか、一樹ひとりのようだ。
乗り込んだエレベーターで遠藤がパネルの三十四階をタップし、一樹に「何階ですか?」と尋ねる。
「同じで」
なんと、一樹もラウンジへ行くらしい。
一樹はひとりでよくそこへ行くようだから、純粋にお酒を飲みに行くのだけに過ぎないのかもしれない。でも、エレベーター内の空気はどことなく重苦しく感じた。
遠藤になにか話しかけられたが、梓はそれどころではなかった。
三十四階へ到着すると、先に降り立った一樹の後を追うように梓たちもラウンジへ入る。
パノラマ写真のような夜景が広がる長いカウンター席の隅に、梓と遠藤は案内された。
一樹は対極の隅に座っている。カウンターが軽く弧を描いているため、間に人が座っていても一樹の姿は見えた。