恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
あの場に一緒にいた絵梨にひと目惚れをするならわかるが、自分はそうされるような女ではないと不思議でならない。
出されたカクテルでひとまず乾杯をする。
「梓さん、お休みの日はなにをされていますか?」
「特別な用事はなく、自宅で本を読んだりだとか……」
多香子が入院してからは病院へ行くこともよくあるが、普段は一日自宅で過ごす方が多い。
「僕もこう見えて読書家なんですよ。梓さんはどういった本を読まれるんですか?」
「いろいろと読みますが、ハードボイルドやミステリーが好きです」
「ハードボイルド! 僕も好きですよ! あ、あれ読みましたか? えっとなんてタイトルだっけかな。……そうだ、【リッチモンドの夕べ】」
遠藤が本の話をうれしそうにするのを聞きながら、梓の神経は一樹に向いていた。
一樹は梓の方を見もせず、梓が一方的にチラチラと視線を送り続けるだけ。まるで、梓がどうしようが興味がないといった感じに見えた。
でも、それもそうだろう。一樹とは恋人であって恋人でない。
一樹の気持ちが梓にあるわけではないのだから。