恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「バッグは持ってるだろう?」
一樹が梓の手を掴む。
「ですが……!」
遠藤をこのままにしておくわけにはいかない。
「挨拶もしないで帰れません」
「それならひと言断っておいで」
優しい言葉尻のわりに強い口調だった。断るのを許さないような目も梓に注がれている。
わけがわからない梓だったが、遠藤とふたりきりでこれ以上いたいとも思わず、「はい」と言ってラウンジに戻った。
ちょうどカクテルを飲み干し、バーテンダーにお代わりをお願いしている遠藤に声をかける。
「遠藤さん、ごめんなさい。急用ができてしまって」
「……急用ですか? もしかして今の電話?」
嘘が心苦しくて、声に出せずに頷く。
「そうですか。それは残念だけど、また今度にしましょう」