恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

(ここで断ったら、立派な社員として胸を張っていられなくなるんじゃない? だって、社長たっての頼みなのよ? それを断っていいの?)

梓の心が大きく動きだす。
肩を上下させるほどに息を吸い込み、吐き出すと同時に「わかりました」と答えた。

ボスである一樹を助けたい。いつもは遠くから縁の下の力持ちとして陰ながら支えてきたが、今こそ立ち上がる時。殊勝な心がけで、一樹を見上げる。


「そうか!」


一樹は安堵したように緊張を解き、パッと顔を輝かせた。
そして、いきなり梓をがっしりと抱きしめる。


「しゃ、社長!?」
「サンキュー。助かるよ」


突然のことに梓が戸惑っているうちに、身体が解放された。


「そうと決まれば行くぞ」
「は、はい」


一樹が向かおうとしているのは、おそらく友里恵のところだろう。
梓を婚約者として紹介し、見合いパーティーなるものを中止させようと。

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