恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

弟はこのマンションに住んでいる医者だと、一樹が以前話してくれたことを思い出した。
男性の目が梓に向けられ、ニコッともしない表情を前に梓の背筋が伸びる。


「紹介するよ。佐久間梓さん」


一樹に紹介され、梓は「は、はじめまして。梓です」と、慌てて自分でも名乗った。


「梓、こっちは修矢。俺の弟だ」


やはりそうだった。一樹はどちらかといえば穏やかな顔立ちをしているが、修矢はシャープで、あまり似ているようには見えない。

修矢は梓を数秒間見つめ、わずかに唇の端を上げた。


「兄貴も本気で恋愛する気になったってことか」
「まぁ、そうだな」


一樹は少し照れながら鼻の下をこする。


「うまくやれよ」


最後にささやかな笑みを残し、修矢は軽く手を上げて先に歩き出した。

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