恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
◇◇◇
忍び草を出た梓たちは、一樹のマンションに向かった。
今夜はそこに泊まることになっており、一樹は陽子にも律義に了承をとっていた。
〝お泊り〟を前もって親に報告するのはかなり恥ずかしく、梓はなにも口を挟めずに一樹の隣で小さくなった。
明日は休みだから、今夜からふたりでゆっくり過ごしたいと一樹に熱っぽい瞳で言われて、拒める女性はきっといない。
マンションの地下駐車場に到着して車を降りたところで、一樹は「ようっ!」と突然声をあげた。
知り合いでもいたのかと梓がかしこまって一樹の視線を追うと、そこにはスラッとした長身の男性がいた。涼やかな目もとが印象的だ。
「千花(ちか)ちゃんは?」
一樹は、その男性の周りにキョロキョロと視線を泳がせる。
「今、仕事帰りだよ」
「土曜日だってのに病院は忙しいな。お疲れ様」
病院という単語が、梓の記憶を刺激する。
(もしかしたら、弟さん? たしか修矢さんといったような……)