恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

「実はですね――」
『今度の週末、どこかへ出かけませんか?』


口火を切った梓を遠藤が遮る。


「……あ、えっと、申し訳ありません」
『予定が入っていますか?』
「いえ、そうではなくて、この前の夜に言いそびれたことがあるんです」


遠藤の勢いに気圧されそうになったが、梓はなんとか話を戻した。
早く伝えなければ、遠藤に対して失礼だろう。


『……なんですか?』


浮かれる遠藤と対照的な梓の雰囲気で、なにかを察知したか。遠藤は声のトーンをいくらか落とした。


「私、好きな人がいるんです。この前は母から突然遠藤さんを紹介されて、言うタイミングを逃してしまって……。それでその、つまり……」
『僕とは会えない、というわけですか』
「……はい。申し訳ありません」


一樹の言っていたように、遠藤が友達の延長上に恋人を考えているのだとしたら、ふたりで会うわけにはいかない。
遠藤にも一樹にも不誠実だ。

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