恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「社長! お逃げになるとはどういうおつもりですか?」
そう言いながら、友里恵の視線が梓へ向けられる。
鋭い視線を突き立てられ、梓の喉の奥がひゅっと音を立てた。
「企画デザイン部の佐久間さん、よね?」
友里恵が訝しげに小首を傾げる。同じ所作なのに、絵梨のそれとはまったく別物に見える。
「は、はい」
膝が震えるのは寒さのせいなのか、はたまた友里恵に対する畏怖なのか。
「どうしてあなたが社長と一緒にいるの?」
「それは――」
「三島に紹介しておこうと思ってね」
梓が口を開いた直後、一樹がすかさず助け船を出す。
「ずっと隠していたんだけど、俺の恋人、いや婚約者の梓だ。」