恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「梓さんは、表面的にしか見えていないのでしょう。現に、土地買い取りの話が進められていますが、オーナーさん方からは歓迎されていますよ。その商業ビルへの出店するもよし、立退料で郊外へ引っ越すもよし。我々もいいお話をさせていただいていると自負しております」
遠藤は自信たっぷりの笑みを浮かべた。
あの商店街にそんな話が持ち上がっているとは。
それは思いも寄らない話だった。しかも、その方向で話が進んでいるという。
そこで梓はふと、陽子が浮かない顔をしていたのを思い出した。
もしかしたら、このことを思い悩んでいたのではないか。
忍び草は、母方の曾祖父母から受け継いだ土地に陽子の父親が建てた大事な店。狭い土地とはいえ、そこを陽子は守ってきたのだ。
それを手放す話を持ちかけられて苦悩していたのかもしれない。
「でも、梓さんのお母様は反対されている。あの場所を明け渡したくないと」
「そうだと思います。母は忍び草をとても大切にしてきましたから」
常連で成り立っていると言ってもいい店。なんとか細々とやっている店には違いない。
でも、代々受け継いできた土地を簡単に手放せるかといったら、そうではないはずだ。