恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

「では、お母様を見殺しにするんですね」
「見殺しだなんて……!」


そんなつもりはまったくない。早くに夫を亡くした陽子は、女手ひとつで梓を育ててくれたのだ。梓にとって、かけがえのない存在。

遠藤の言い方にカチンときたが、梓がそれ以上を続けられずに言葉に詰まったのも事実。心が振り子のように大きく揺れる。

でも、一樹と別れる選択肢は梓にはない。


「すぐに決断するのは難しいでしょう。でもきっと、梓さんは賢明な選択をされるはずです。あまり時間はありません。なるべく早くお返事をお待ちしていますよ」


そう言って遠藤は、会計伝票を持ってテーブルを立つ。

残された梓は、その場からしばらく動けなかった。

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