恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
『奔放なあなたには、もう付き合いきれない』
たしか、そんな言葉だったか。
一樹はそれを聞いても、〝ふーん、そうか〟くらいにしか思わなかった。振られた痛みを感じるほど、相手に対して思い入れがなかったのだろう。
去る者を追わず。それが、一樹の恋愛におけるスタンスだった。
自分についてこられないのなら、それでいい。
それが本気の恋ではなかったのだと知ったのは、梓と出会ってから。
最初こそ自分のペースに巻き込み、自分勝手にことを進め、いつもしてきたように振り回してきた。
ところが、いつからか梓の反応が気になり、自分がどう思われているのか梓の真相心理を探っていると気づく。
ふとしたときに考えるのは梓のことだった。梓が笑った顔、戸惑った顔、照れた顔。それらひとつひとつを思い出し、胸が高鳴るのを感じた。
その梓からの別れの言葉は、これまでの恋愛で一樹に向けられたものと同じなのに、ダメージは比べものにならなかった。
似て非なるもの、とでも表現したらいいのか。
その衝撃の強さのせいで、昨夜の一樹は梓を追えず、カウンターに縛りつけられたように動けなかった。