恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
一樹が一般家庭の生活レベルと違っていたのは事実。でも一樹は、それを鼻にかけるわけでも、ひけらかすわけでもなかった。
気取らない人柄は、常に人を惹きつけていた。
多香子と陽子が、眉尻を下げて悲しそうに梓を見つめる。
ふたりにそんな顔をさせるわけにはいかないと、梓は明るい声でさらに続けた。
「でね、前にお母さんに紹介してもらった遠藤さんと、今はお付き合いさせてもらってるの」
「えっ? あの遠藤さんと?」
陽子が驚いた声をあげる。それも無理はないだろう。もうとっくに断って、話が済んでいると思っていただろうから。
でも、それを黙っているわけにはいかない。
「うん。たぶんこのまま結婚になるかと思う。遠藤さんも専務さんだけど、一樹さんに比べたら庶民的っていうか、ね」
「……本当にそれでいいのかい?」
「うん。決めたことだから」
多香子に確認され、自分にも言い聞かせるように強く頷く。
(これでいい。これが最善の道だから。一樹さんはモテるから、きっとすぐに新しい人と巡り合えるはず。私のことなんて、すぐに忘れちゃうわ)