恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
あれから遠藤は毎晩のように梓に電話連絡を入れ、休みの日には反強制で連れ出す。
婚約披露パーティーの話も急ピッチで進められているらしく、会うたびに遠藤はうれしそうに梓に報告してくる。
梓はそれも半分以上は耳に入らず、どこか他人事のような感じだった。
遠藤と人生を歩んでいく実感が、いまだに沸かない。
「久城の家とうちとは、ことごとく縁がないのかね……」
多香子がポツリと寂しそうに呟いたのを梓は聞き漏らさなかった。
多香子にも、一樹の祖父との恋を諦めなければならなかった過去がある。
でも、もしもそのときにふたりがうまくいっていたら、梓は今ここにはいない。
多香子の言うように、一樹とはそういう運命でしかなかったのだろう。
「そういば、お母さんはお店の方はどう?」
「おかげさまでなんとかね」
「なにか気になったり、困ったりしてることはない?」
ここで梓から商業ビルの話を持ち出したら、遠藤との関係性を不自然に思われるだろう。梓は遠まわしに聞いた。