恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

「ほら、梓もひとつお食べ」
「おばあちゃんがあとで食べるのにとっておいたら?」
「あんまり食べたら先生に怒られちゃうから」


多香子は肩をすくめて、お茶目にペロッと舌を出す。

そこまで言うのならと、梓は多香子が差し出したイチゴ大福をほくほく顔で受け取った。
透明のフィルムをはがし、ひと口かぶりつく。

(うーん、やっぱりおいしい)

イチゴが丸ごと入ったそれは、甘さも控えめで皮は伸びるほどにやわらかい。持参したお茶を飲み飲み、梓は大福を堪能する。


「ねぇ、梓」


口をもごもごさせながら「ん?」と、多香子を見た。


「ここに足繁く通ってくれるのはありがたいんだけど、お食事したりデートしたり、そんな相手をそろそろ作ったらどう?」


唐突に妙なことを言われ、梓はパフッと白い粉を口から噴いた。バッグから慌ててハンカチを取り出して、口もとを拭う。

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