恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「や、やだ、おばあちゃん。私にそんな人ができるわけがないでしょう?」
そう言いながら、一瞬だけ脳裏に浮かんだ一樹の顔を必死に追い払う。
「なに言ってるの。梓はいい子だし、おばあちゃんに似て美人さんなんだから」
多香子がおどけて笑う。
「おばあちゃんが美人なのは認めるけど、私はさっぱりダメよ」
もしもそう見えるのだとしたら家族の欲目だ。
(私みたいな大女じゃ、彼氏なんてできっこないわ。いっそ男に生まれればよかったのに)
父方の祖父母も母方の祖父母も、おまけに両親とも身長が高い。もう亡くなってこの世にはいないが、祖父は百九十センチもあった。
長身の家系なのだから、梓が高身長に生まれつくのは自然なのだろう。
「そんなことないわよ。梓の花嫁姿を見ずして、おばあちゃんも死ぬわけにはいかないからね」
「やだ、死ぬなんて言うのはやめて。おばあちゃんが退院してくれないと、私、晩ごはんのときにひとりぼっちなんだから」