恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
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クレアストの本社は、背高のっぽのビルが建ち並ぶオフィス街にある。
地上四十階建て、地下二階のそのビルは、三階から上がミラーガラスになっており、築二年の新しさもあって周辺ではとても目立つ。
大小さまざまな企業が入居し、クレアストは三十四階から三十八階に事務所を構えている。
創立記念パーティーから二日が経った月曜日の朝。
梓が三十七階にあるデザイン企画部に出勤するや否や、絵梨は「梓さん!」と椅子を鳴らして立ち上がった。
「体調はどうなんですか? 仕事にきて大丈夫なんですか?」
「あぁ、うん。大丈夫よ。心配かけてごめんね」
目を泳がせながら、なんとかそう答える。
「社長を探しに行ったまんま、突然具合が悪くなったから帰るなんて言うんですもん」
「本当にごめんね」
頬を膨らませて心配そうに梓の顔を見つめる絵梨に、手を合わせて謝った。
あの夜、一樹から二度目のキスをされた後、放心状態から覚めた梓は、動揺しながらなんとか絵梨に連絡を入れた。