恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「あれ? それじゃ梓さん、あのとき社長を探しに行ったけど見つけられなかったんですか?」
「あぁ、うん、そうなの。見つけられなくて。あちこち探したんだけどいなかったから、もしかしてキャビンで休んでいたのかしらね」
速くなる鼓動がそうさせるのか、自分でも驚くほどに早口になる。焦点も合わず、かなり挙動不審だ。
「……梓さん、なんか今日は様子が変ですね」
絵梨の目が探るようにくるくると動く。
「そそ、そんなことないよ。普通。いたって普通よ」
「そうですか? いつも落ち着いているのに、今日は私も驚くくらいテンパっていません?」
絵梨の言葉にギクッとせずにはいられない。それでもどうにかこうにか取り繕い、梓は「週明けの月曜日だからかな」と誤魔化してやり過ごす。
「さてと、今日も一日がんばろね」
頭を仕事モードになんとか切り替え、梓はパソコンを立ち上げた。