恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

デザイン企画部は部長を筆頭に二十名のデザイナーと、補助的な業務をする十名の社員がいる。
デザイナーがそれぞれ他部署と連携してチームを組んでひとつの案件にあたり、梓や絵梨は、いくつかのチームの補助業務を一度に担当する。

梓が今受け持っている中で最も大きな仕事は、結婚式場の空間デザインである。
それは一樹の空間デザインのセンスに惚れ込んだ、ブライダルプロデュース会社『シュプリームウエディング』の社長による依頼である。その社長にとって初の式場建築のため、かなり力が入っている。
設計から内装のすべてを任せた一大プロジェクトともいえるだろう。

つまり一樹が大きくかかわっている案件である。

つい先日、建物の建築が着工したばかり。クレアストが得意とする空間デザインの本領を発揮するのはもう少し先だが、補助的な業務を担当している梓も気は抜けない。

デザイナーから指示されたCGパースの修正を終えると、退勤時間の午後五時半まであともう少しというところだった。
そのときふと梓のパソコンの画面に〝新着メールあり〟と、社内メールの受信を知らせるメッセージが表示される。

(仕事の依頼だったら今日は残業かな)

そんなことを考えつつマウスを操作。すぐに開いたメールソフトの発信者名を見て、梓はドキッとさせられた。
一樹だったのだ。

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