恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
一樹は左手の親指を立て、後ろを差した。
(尾行って、まさか三島さんが!?)
驚いて振り返ろうとすると、咄嗟に一樹が「見るな」と梓の肩を押さえる。
「助手席から不用意に覗けば、三島にも見えるだろう。気づいていないふりを装った方がいい」
「は、はい……」
なんと、友里恵が尾行。本当に婚約者かどうか、あら探しというわけだ。
なにがなんでも一樹を結婚させたいという強い意思を感じて、梓は身震いを覚える。
これが嘘だとばれたら、いったいどうなるのだろう。
そう考えると、梓はただでは済まされないと思えた。
「社用車まで手配するとはな。……こうなったら三島に見せつけるしかない」
「見せつけるとは、なにをですか?」
「俺たちが婚約者だってことに決まってるだろう?」
一樹は梓を横目でチラッと見て、いたずらっぽく唇の端を上げた。
(な、なにをするんだろう。まさか……)