恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

「よくできました」


そう言って一樹が梓の髪を撫でかと思えば、


「綺麗な髪だな」


突然褒められた。


「えっ、こんな髪の毛がですか?」


針金のような直毛は、いくらひどい寝相でも、寝ぐせのひとつもつかない。コシの強さにもほどがある。


「こんなって言い方はないだろ。しなやかでいてハリがある。手触りがいいから、ずっと触っていたいくらいだ」


そんなことを言われたのは初めて。信じられないのと恥ずかしいのとで、梓はうろたえる。
そのうえ一樹に指先で髪をさらさらと弄ばれ、くすぐったくてたまらない。


「ですが、子供の頃はハリネズミってあだ名だったんです」
「ハリネズミ? それはずいぶん失礼だな」


一樹は眉をひそめてから、「でも、俺は綺麗だと思うよ」と付け加えた。

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