恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

まだYESともNOとも言っていないのにと頭で思いながら、梓は口への指令が出遅れた。それもこれも、一樹にからかわれたからにほかならない。
男慣れしていないところへきてキスをされ、かわいいと言われ、とにかく梓の頭のキャパシティは限度オーバー。そうだというのに、それ以降も一樹は不必要に梓の肩を抱き寄せたり、顔を近づけて話したりするのだから。

友里恵に見せつけるためとはいえ、行き過ぎた行為に梓はドキドキさせられっぱなし。こんな状態がまだ続くのかと思うと、頭が痛かった。


「そろそろ行こうか」


一樹に言われ、スツールから下り立った梓はその場で足がふらつき、思わず一樹の胸によろける。


「あっ……ごめんなさい」


単に足がおぼつかなかっただけではない。つい飲み過ぎたためだろう。
一樹の過剰なスキンシップに惑わされないようにと、アルコールで誤魔化そうとしたのが仇になった。


「大丈夫か?」
「……はい。ちょっと飲み過ぎちゃったみたいです」
「二杯しか飲んでないぞ?」

< 57 / 301 >

この作品をシェア

pagetop