恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

でも、偽りの婚約者として失格だと思われるなら、その方がいい。この場で車を降ろされたとしても、梓は恨むつもりも憎むつもりもない。

ところが一樹は、梓が想像していたものと違う反応だった。「そうなのか」と言った声が、どことなく弾んでいるような気がする。

(もしかして……からかうにはおもしろい相手だと思われたのかな……)

そうだとしたら、それはそれでショックだ。


「よし。それじゃ、記念すべき二度目のデートだ。楽しんでいこう」


思わず〝オー〟と言って腕を突き上げたくなるような言い方だった。

車の中でさんざん迷った挙句、アクションものを観ることに決定。
寄せ集めの悪党たちが世界を救うという、コメディ要素もある映画だ。今、劇場でも人気があるらしい。

映画館が入っているビルの地下駐車場に車を停め、梓たちはエレベーターに乗り込んだ。
目的の階に到着し、一樹に肩を抱かれてエレベーターから降りると、梓は足にふと違和感を覚えた。

見てみれば、パンプスのストラップが外れているではないか。

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